現場で手を守る保護手袋。ひとくちに作業手袋といっても、耐切創・耐熱・耐薬品など種類は幅広く、作業に合わないものを選ぶと、けがを防げなかったり、逆に作業がしづらくなったりします。さらに意外と知られていないのが、「手袋を使ってはいけない作業がある」という点です。

保護手袋選びで押さえるべきポイントは、大きく次の3つです。
- 作業に潜む危険(切創・熱・薬品など)に合わせて種類を選ぶ
- 耐切創手袋は、レベルの高さと作業性のバランスで選ぶ
- 回転する刃物の作業など、手袋を使ってはいけない場面を理解する
本記事では、購買担当者・現場責任者の方が安全かつ的確に選べるよう、手袋の種類から耐切創・耐熱・耐薬品の規格と選び方、使用を避けるべき作業までを整理します。現場で必要な保護具全体は「建設現場で揃える安全保護具チェックリスト」もあわせてご覧ください。
保護手袋はなぜ重要か|「使ってはいけない作業」もある

手は作業で最も使う部位であり、切創・やけど・薬品による障害などのリスクに常にさらされています。作業に合った保護手袋を着けることは、けがを防ぐ基本です。
一方で、非常に重要な注意点があります。ボール盤やフライス盤など、回転する刃物を扱う作業では、手袋の使用がかえって危険になります。手袋の繊維が回転部に巻き込まれると、手ごと機械に引き込まれ、指の切断など重大な事故につながるためです。労働安全衛生規則第111条でも、「事業者は、ボール盤、面取り盤等の回転する刃物に作業中の労働者の手が巻き込まれるおそれのあるときは、当該労働者に手袋を使用させてはならない」と定められており、労働者も使用を禁止されたら使ってはいけません。回転体を扱う加工作業では、素手での作業が原則です。
つまり保護手袋は、「その作業に手袋が必要か、そもそも使ってよいのか」を確認したうえで、適切な種類を選ぶことが大切です。
保護手袋の主な種類
保護手袋は、作業に潜む危険に応じて選びます。代表的な種類は次のとおりです。
- 一般作業用手袋:軍手(綿)、革手袋、ニトリルやポリウレタンをコーティングした手袋など。すべり止めや手のフィット感を重視した汎用タイプ
- 耐切創手袋:刃物・ガラス・薄い金属板など鋭利なものを扱う作業向け
- 耐熱手袋:溶接や炉前など、高温・火花のある作業向け
- 防振手袋:削岩機やインパクトなど、振動工具を扱う作業向け
- 使い捨て手袋:ニトリルなどの薄手タイプ。精密作業や衛生管理が必要な現場向け
以下、特に選定を誤りやすい耐切創・耐熱・化学防護を中心に、選び方を解説します。
耐切創手袋の選び方(規格とレベル)
刃物・ガラス・鉄板などを扱う現場では、切創事故を防ぐために耐切創手袋を使用します。選ぶうえで基準になるのが、欧州で定められた規格EN388です。
EN388:2016の6項目
EN388:2016は、作業用手袋の物性強度を次の6項目で評価します。
- 耐摩耗性(4段階)
- 耐切創性(クープテスト=回転刃/5段階)
- 耐切創性(TDMテスト=直線刃/6段階:A〜F、Fが最高)
- 耐引裂性(4段階)
- 耐突刺性(4段階)
- 耐衝撃性(合格・不合格)
耐切創性が2種類あるのは、試験方法の違いによります。クープテストは円形の刃を往復させて切れるまでの回数で1〜5を評価しますが、耐切創性の高い製品では刃の切れ味が鈍り正確に測れないことがあります。その場合はクープの表示が「X」となり、平刃を用いるTDMテスト(ISO 13997、A〜F)で評価します。高性能な耐切創手袋を選ぶときは、このTDMのレベル(A〜F)を確認すると分かりやすいでしょう。
素材・ゲージ・コーティング
耐切創手袋には、高性能ポリエチレン(HPPE)、パラアラミド(ケブラーなど)、ガラス繊維、金属繊維などの切れにくい素材が使われます。編み目の細かさを示す「ゲージ数」も選定要素で、一般的な軍手が7ゲージなのに対し、18ゲージは薄手で手にフィットし、細かい作業に向きます。表面のコーティング(ニトリル、ポリウレタン、天然ゴムなど)は、グリップ力や耐油性に影響します。
レベルが高ければよいわけではない
注意したいのは、耐切創レベルは高いほどよいというものではないという点です。一般に耐切創性の高い製品は、着け心地・重さ・動かしやすさに影響が出るため、細かい作業では作業効率が落ちます。求められる耐切創レベルと、他の性能(耐摩耗・耐突刺など)や作業性とのバランスで選びましょう。なお、耐切創手袋は「絶対に切れない」手袋ではなく、強い力を加えれば切れることもあります。作業内容に応じた対策とあわせて使用してください。
耐熱手袋の選び方

溶接や炉前作業、熱い部材を扱う作業では、耐熱手袋を使用します。耐熱性能の規格には欧州のEN407があり、接触熱・対流熱・放射熱など、熱源の種類ごとに耐性を評価します。素材にはアラミド繊維(ケブラーなど)がよく使われ、製品によっては高い接触熱クラス(例:250℃までの接触熱に対応)を備えたものもあります。作業でどのような熱にさらされるか(直接触れる熱か、輻射熱かなど)を踏まえて選びましょう。革製の手袋も、火花や高温部材を扱う溶接作業で広く使われています。
防振手袋
防振手袋は、削岩機やチェーンソー、インパクトレンチなど振動する工具を扱う作業で使用します。強い振動に長期間さらされると、手や指の血行障害・神経障害(いわゆる振動障害)を引き起こすおそれがあります。手のひら部分に緩衝材を入れて振動を軽減する構造になっており、振動工具を日常的に使う作業では備えておきたい手袋です。
コーティングと形状で選ぶ(共通のポイント)
手袋の種類とあわせて、コーティングの範囲や形状も作業性を大きく左右します。これはどの種類の手袋にも共通する選定ポイントです。
- 背抜き(手のひらコート):手のひら側だけをコーティングし、甲側は編み地のまま。通気性がよく蒸れにくいため、組立や軽作業で人気です
- 3/4コート:手のひらから側面まで覆うタイプ。手の側面まで保護しつつ通気性も残します
- フルコート(総ディップ):全体をコーティングするタイプ。耐水・耐油・耐薬品性が高く、液体を扱う作業に向きます
コーティング材にも特徴があります。ニトリルは耐油性に優れ、天然ゴムはグリップ力が高く、ポリウレタンは薄手で精密作業に向き、フォームタイプは通気性とグリップを両立します。作業内容(乾いた部品か、油や液体を扱うか、細かい作業か)に合わせて選びましょう。
インナーグローブ・重ね付けという選択肢
耐切創性や防寒性を補いたいときは、手袋の重ね付けも有効です。例えば、薄手(18ゲージなど)の耐切創インナーグローブを革手袋の下に着ければ、分厚くなりすぎずに耐切創性を補強できます。冬場は防寒インナーを組み合わせて保温性を高めることもできます。作業性を保ちながら必要な性能を足したいときに検討してみてください。

迷ったときは、作業に潜む危険から考えると選びやすくなります。
- 刃物・ガラス・薄い金属板を扱う → 耐切創手袋
- 溶接・高温・熱い部材を扱う → 耐熱手袋(革手袋も可)
- 薬品・溶剤・油を扱う → 化学防護手袋(対象薬品に合う材質を確認)
- 感電のおそれがある → 電気用絶縁手袋
- 振動工具を扱う → 防振手袋
- 精密作業・衛生管理が必要 → 使い捨てニトリル手袋
- 回転する刃物を扱う(ボール盤など) → 手袋は使用しない(素手が原則)
サイズ・お手入れ
サイズ選びも安全に直結します。大きすぎる手袋は、機械への引っかかりや巻き込まれのリスクが高まり、細かい作業もしづらくなります。逆に小さすぎると、手が疲れやすく血行も妨げられます。手袋のサイズはメーカーによってS〜LLなどで表記され、手のひらまわりや中指の長さを目安に選びます。実際に着けてみて、指先まで無理なく届き、握ったときに突っ張らないものを選びましょう。
また、保護手袋は消耗品です。切れ・穴・薬品による劣化が見られたら交換します。洗濯などのメンテナンスがしやすい製品ほど機能を長く保てるため、こまめに手入れできるかも選定の観点に加えるとよいでしょう。

まとめ|危険に合わせて、正しく選ぶ
保護手袋選びは、要点を押さえればシンプルです。改めて整理します。
- まず「その作業に手袋を使ってよいか」を確認する(回転刃物の作業では手袋禁止)
- 作業に潜む危険(切創・熱・薬品・感電・振動)に合わせて種類を選ぶ
- 耐切創手袋はレベルの高さだけでなく、作業性とのバランスで選ぶ
- 化学防護手袋は、対象の薬品に合った材質と透過データを確認する
- サイズを手に合わせ、消耗品として計画的に交換する
現場の作業内容や必要な性能、複数名分のまとめ買いについては、サイズ展開も含めてご相談ください。作業に合った手袋選びをサポートします。
よくある質問(FAQ)
Q. 耐切創レベルは高いほどよいのですか? A. 必ずしもそうではありません。耐切創性の高い手袋は着け心地や動かしやすさに影響が出やすく、細かい作業では効率が落ちます。作業に必要なレベルと、他の性能・作業性とのバランスで選ぶことが大切です。
Q. 手袋を使ってはいけない作業はありますか? A. あります。ボール盤やフライス盤など回転する刃物を扱う作業では、手袋が巻き込まれると重大な事故につながるため、労働安全衛生規則第111条で手袋の使用が禁止されています。回転体を扱う加工作業では素手が原則です。
Q. 化学防護手袋は、どの薬品にも使えますか? A. いいえ。材質によって耐えられる薬品が異なります。例えばニトリルは油・溶剤に、天然ゴムは一般的な酸・アルカリに強いなど、それぞれ得意な薬品が違います。扱う薬品に合った材質を選び、透過するまでの時間(耐久時間)も確認してください。
Q. 使い捨て手袋とゴム手袋(化学防護手袋)は何が違いますか? A. 使い捨て手袋は主に精密作業や衛生管理を目的とした薄手のもので、耐薬品性は限定的です。薬品や溶剤から手を守るには、対象薬品に適合したJIS T 8116の化学防護手袋を使用してください。
Q. 天然ゴムアレルギーがあります。使える手袋はありますか? A. あります。ニトリルゴム製など、天然ゴムを使わないラテックスフリーの手袋が各種あります。アレルギーが心配な場合は、ラテックスフリー表示のある製品をお選びください。
Q. 「背抜き手袋」とは何ですか? A. 手のひら側だけをコーティングし、甲側を編み地のままにした手袋です。通気性がよく蒸れにくいため、組立や軽作業で広く使われています。一方、水や油、薬品を扱う作業には、全体を覆うフルコートタイプが向いています。
Q. 溶接作業に軍手(綿手袋)は使えますか? A. 適していません。綿の軍手は火花で燃えたり穴が空いたりするおそれがあります。溶接や高温作業には、革手袋や耐熱手袋を使用してください。
Q. 冬場の防寒手袋は何を基準に選べばよいですか? A. 保温性(裏起毛・防寒インナーなど)に加え、防水・防風性、そして作業性のバランスで選びます。厚すぎると細かい作業がしづらくなるため、必要な保温性と手先の動かしやすさを両立できるものを選びましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。必要な手袋や規格・数値は作業内容・取り扱う物質によって異なり、法令の改正により変わる場合があります。実際の選定にあたっては、各製品の規格表示・適合データ、および最新の関係法令・公表資料をご確認ください。
