一年の締めくくりとなる年末年始は、実は労働災害が増える時期といわれています。仕事に追われる慌ただしさ、長期休業前後の気持ちの焦りや切り替えの遅れ、大掃除や設備メンテナンスといった普段と違う作業——こうした要因が重なり、災害のリスクが高まるためです。
この時期に、働く人が無事故で年末年始を過ごし、明るい新年を迎えられるようにと実施されるのが「年末年始無災害運動」です。昭和46年(1971年)から続く、歴史ある全国的な運動です。
この記事では、年末年始無災害運動の趣旨と期間・標語を確認したうえで、なぜ年末年始に災害が増えるのか、そして現場・事業所が取り組むべき安全対策を、必要な用品とあわせて解説します。一年を無事故で締めくくり、笑顔で新年を迎えるための備えとして、ぜひ役立ててください。
年末年始無災害運動とは

年末年始無災害運動は、働く人たちが年末年始を無事故で過ごし、明るい新年を迎えることができるようにという趣旨で、中央労働災害防止協会(中災防)が主唱し、厚生労働省が後援する運動です。昭和46年(1971年)から続いており、半世紀以上の歴史があります。
「安全最優先」の考え方を基本に、慌ただしい時期にこそ、作業前点検の実施や安全な作業方法の確認などを着実に行うことを呼びかけています。事業場が自主的に安全衛生活動を強化する「節目」として位置づけられています。
運動の期間と標語
年末年始無災害運動の期間と標語は、次のとおりです。期間は毎年共通で、12月1日から翌年1月15日までとなっています。
|
項目 |
内容 |
|
実施期間 |
毎年12月1日〜翌年1月15日 |
|
2025年度の標語 |
「年末」感謝の総点検 「年始」も笑顔で 無事故の発進 |
|
主唱 |
中央労働災害防止協会(中災防) |
|
後援 |
厚生労働省 |
標語は年度ごとに定められます。運動期間は約1か月半に及び、一年の終わりから新年のスタートまでをカバーします。建設業では、建設業労働災害防止協会(建災防)による「建設業年末年始労働災害防止強調期間」も同時期に実施されます。
なぜ年末年始に労働災害が増えるのか

年末年始に災害が増えるのには、明確な理由があります。この時期特有のリスク要因を理解しておくことが、対策の第一歩です。
|
要因 |
内容 |
|
非定常作業の増加 |
大掃除、設備メンテナンスなど普段と違う作業が増える |
|
工期の切迫・繁忙 |
年内完了を目指す焦りから、無理や近道行動が生じやすい |
|
気持ちの焦り・緩み |
休業前の焦り、休業後の切り替えの遅れによる不注意 |
|
交通量の増加 |
人・車の往来が増え、交通労働災害のリスクが高まる |
|
冬季特有の危険 |
凍結による転倒、一酸化炭素中毒など寒さ由来のリスク |
特に、普段行わない「非定常作業」は、慣れていないぶん危険が潜みます。大掃除で高所に上がる、普段触らない設備を清掃・点検する、といった作業には、通常作業とは異なる注意が必要です。
現場・事業所が取り組むべき対策

年末年始無災害運動の期間中、現場・事業所で重点的に取り組みたい対策を整理します。
1.非定常作業のKY活動を徹底する
大掃除や設備メンテナンスなどの非定常作業には、その作業ならではの危険があります。作業前にKY活動(危険予知)を行い、「どんな危険があるか」「どう対策するか」を全員で確認します。特に高所での清掃、脚立・はしごの使用、普段触らない機械の取り扱いには、重点的な注意が必要です。
2. 保護具・安全標識・設備の総点検
運動期間は、安全保護具・労働衛生保護具や、安全標識・表示の点検・整備・更新の好機です。傷んだ保護具や色あせた標識がないか点検し、必要なものを更新します。「感謝の総点検」という標語のとおり、一年使った設備・用品をねぎらう気持ちで見直しましょう。
3. 冬季特有のリスクへの対策
年末年始は真冬と重なります。凍結・積雪による転倒、密閉空間での火気使用による一酸化炭素中毒など、冬季特有の危険への対策も欠かせません。融雪剤・すべり止め、一酸化炭素検知器・換気など、冬の備えとあわせて進めましょう。
4. 交通労働災害の防止
年末年始は交通量が増え、交通事故のリスクが高まります。死亡労働災害に占める交通事故の割合は小さくありません。安全運転の徹底、車両の点検、無理のない運行計画を心がけましょう。日没が早まる時期でもあるため、早めのライト点灯も有効です。
運動を活かす|掲示と声かけで意識を高める
運動を実効あるものにするには、全員が「年末年始は災害が増える」という意識を持つことが大切です。次のような取り組みで、現場全体の意識を高めましょう。
・ 運動の標語ポスターやのぼりを掲示し、期間中の意識づけを行う
・ 朝礼で年末年始特有の危険を共有し、注意を呼びかける
・ 安全パトロールを実施し、危険箇所を洗い出して是正する
・ 作業前点検・作業前ミーティングを、慌ただしい時こそ確実に行う
・ 周囲の仲間と声をかけ合い、無理・近道行動を互いに戒める
慌ただしい時期だからこそ、「急がば回れ」の姿勢で、基本の安全行動を確実に行うことが、無事故につながります。声をかけ合う雰囲気づくりも、災害防止の大きな力になります。
まとめ|慌ただしい時期こそ「基本の徹底」で無事故に

年末年始無災害運動のポイントを、あらためて整理します。
・ 年末年始無災害運動は、12月1日〜翌1月15日に実施される全国運動(中災防主唱)
・ 年末年始は、非定常作業・繁忙・気持ちの緩み・交通量増・冬季リスクで災害が増える
・ 大掃除・メンテナンスなど非定常作業のKY活動を徹底する
・ 保護具・安全標識・設備を総点検し、必要なものを更新する
・ 凍結転倒・一酸化炭素中毒など冬季特有のリスクにも備える
・ 掲示・朝礼・パトロール・声かけで、全員の安全意識を高める
年末年始の労働災害の多くは、慌ただしさや気の緩みが原因です。裏を返せば、慌ただしい時こそ基本の安全行動を徹底することで防げるということです。この運動を機に、現場の安全を総点検し、一年を無事故で締めくくって、笑顔で新年を迎えましょう。
グリーンクロスでは、KYボード・危険予知活動表から、保護具・安全標識、融雪剤・一酸化炭素検知器などの冬季対策用品、安全ポスター・のぼりまで、年末年始の安全活動に必要な用品を幅広く取り揃えています。運動期間の掲示物の準備や、現場の総点検に向けた用品の更新についても、お気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 年末年始無災害運動はいつからいつまでですか?
A. 毎年12月1日から翌年1月15日までです。約1か月半にわたり、一年の終わりから新年のスタートまでをカバーします。この期間は毎年共通です。建設業では、同時期に建設業労働災害防止協会による「建設業年末年始労働災害防止強調期間」も実施されます。
Q. 誰が主唱している運動ですか?
A. 中央労働災害防止協会(中災防)が主唱し、厚生労働省が後援しています。昭和46年(1971年)から続く運動で、半世紀以上の歴史があります。働く人が無事故で年末年始を過ごし、明るい新年を迎えられるよう、事業場の取り組みを促す趣旨で実施されています。
Q. なぜ年末年始は労働災害が増えるのですか?
A. いくつかの要因が重なるためです。大掃除や設備メンテナンスなど普段と違う「非定常作業」の増加、年内完了を目指す焦りや繁忙、休業前後の気持ちの緩み、交通量の増加、そして凍結・一酸化炭素中毒など冬季特有の危険です。慌ただしさと気の緩みが、災害リスクを高めます。
Q. 非定常作業とは何ですか?なぜ危険なのですか?
A. 大掃除、設備の清掃・メンテナンスなど、普段は行わない作業を指します。慣れていないぶん手順が定まっておらず、高所作業や普段触らない機械の取り扱いなど、通常作業とは異なる危険が潜みます。作業前にKY活動で危険を洗い出し、対策を確認することが重要です。
Q. 運動期間中、事業場では何をすればよいですか?
A. 安全衛生活動の強化が中心です。非定常作業のKY活動の徹底、保護具・安全標識・設備の総点検と更新、冬季リスク(凍結・CO中毒)への対策、交通労働災害の防止などを行います。あわせて、標語ポスターの掲示や朝礼での注意喚起、安全パトロールで意識を高めます。
Q. 大掃除で気をつけるべきことは何ですか?
A. 高所での作業に特に注意が必要です。脚立・はしごを正しく使い、無理な体勢での作業を避けます。窓拭きや高所の清掃で墜落・転落しないよう、安定した足場を確保します。また、普段触らない機械や電気設備の清掃では、電源を切るなど確実な手順を踏みましょう。
Q. 標語は毎年同じですか?
A. いいえ、標語は年度ごとに定められます。2025年度は「『年末』感謝の総点検 『年始』も笑顔で 無事故の発進」でした。運動の趣旨(無事故で年末年始を過ごし明るい新年を迎える)は共通ですが、標語はその年ごとに変わります。最新の標語は中災防の公式情報でご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。期間・標語・実施事項は、中央労働災害防止協会(中災防)が公表する情報に基づく一般的な内容です。標語は年度により変わります。実際の取り組みにあたっては、運動の実施要領や関係法令、元請・発注者の指示をご確認いただき、最新かつ正確な情報は中災防・厚生労働省の公式情報をご参照ください。
