【2025年6月~熱中症対策義務化】運輸・物流業向け!求められる企業対応とは?

【2025年6月~熱中症対策義務化】運輸・物流業向け!求められる企業対応とは?

2025.05.27 工事現場

2025年6月から、運輸・物流業を含む屋内屋外作業に従事する業種でも、熱中症対策の義務化がスタートします。これまで努力義務だった対策が、法的な義務へと格上げされ、体制整備・手順の明確化・関係者への周知が企業に求められます。この記事では、運輸・物流業の現場で求められる具体的な対応をわかりやすく解説します。

 

義務化の対象となる運輸・物流業の作業条件とは?

 

以下の条件に該当する場合、企業は熱中症対策を講じる義務があります。

 

POINT!

「WBGT値28℃以上」または「気温31℃以上」の環境下で、
「連続1時間以上」または「1日4時間を超える作業」が行われる場合

 

運輸・物流業の注意点

トラック積み下ろし作業

配送センターでの仕分け作業

倉庫でのピッキング作業

炎天下での荷物の受け渡しや運搬

 

特に夏場や空調のない場所での作業は、これらの条件を満たしやすく、対策の早急な実施が求められます。

 

義務化された熱中症対策:運輸・物流業での対応ポイント

さて、6月から熱中症での死傷者数を減らすため企業には 「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が義務付けられ、未実施の場合は罰則の対象となります。ポイントは、現場での早期発見と迅速な対応です。

 

義務化された熱中症対策まとめ

 

具体的な義務化内容を1つずつみていきましょう。

 

① 体制整備:異常に「気づき即座に報告する」仕組みを現場に

まずは、熱中症のリスクを早期にキャッチする体制の構築が不可欠です。企業に義務付けられる内容は、以下の通りです。

 

引用:https://jsite.mhlw.go.jp/toyama-roudoukyoku/content/contents/002212913.pdf

 

【やるべきこと】

・現場ごとに対策責任者を配置(リーダー・フォアマンなど)

・体調不良時の報告ルールを明確化

 

【推奨対策】

・スマートウォッチでのバイタルモニタリング導入

・バディ制による相互監視

・巡回点検や同僚同士の声かけによる体調確認体制の構築

 

POINT!
熱中症患者の発見の遅れを発生させないために「こちらから気づく」積極的把握体制の構築に努めましょう。一人で作業、運搬をしている際の緊急連絡先なども明確に決めておきましょう。

 

② 手順作成:トラブル時のフローを現場ごとに明文化

実際に熱中症が疑われる従業員がでた場合の対応フローを作成しましょう。企業に義務付けられる内容は、以下の通りです。

 

 

引用:https://jsite.mhlw.go.jp/toyama-roudoukyoku/content/contents/002212913.pdf

 

【やるべきこと】
・配送時や倉庫などで、作業員が熱中症になってしまった場合、またその可能性がある場合に誰にどのような順番で報告をするのかを記載した連絡網を作成しましょう

・近隣の緊急半搬送先の連絡先と所在地をあらかじめ調べ明記しておきましょう

・熱中症の可能性がある従業員を発見した際のフローを分かりやすくまとめておきましょう。

※対応手順においては以下を参考に、現場毎に合ったオリジナルのものを作成してください。

 

引用:https://jsite.mhlw.go.jp/toyama-roudoukyoku/content/contents/002212913.pdf

 

POINT!

配達員など体調不良時に自ら対応しなくてはならない場合のフローも作成しましょう

 

③「関係者への周知」も忘れずに!

 

熱中症対策担当者、緊急連絡網、対応フローが決定次第、全スタッフ関係者に周知をしましょう。

 

【やるべきこと】

・作成した体制・手順を全スタッフへ共有

・配送前の朝礼やミーティングで周知

・運転日報への記載やQRコードでの配信も有効

 

POINT!
派遣や委託ドライバーにも確実に情報を伝えることが重要です。

 

物流センターや倉庫でも熱中症対策を!

ここまで企業に義務化された熱中症対策についてご説明をいたしました。ここからは、熱中症にならないための予防策についてお話ししていきます。

 

熱中症対策というと屋外作業のイメージが強いかもしれませんが、実は物流センターや倉庫内の作業でもリスクは決して低くありません。特に夏季の倉庫・仕分け場では、「密閉された空間に熱がこもる」「空調が届かない」など、見落とされがちな危険要因が潜んでいます。

 

室温よりも「湿度と空気の流れ」が鍵を握る

空調のある室内でも、湿度が高く、空気が停滞している環境では体温が逃げにくくなります。物流センターでは、シャッター開閉の頻度や機械の稼働により湿気がこもりやすく、見た目以上に不快指数が高いのが実情です。

 

・大型工場扇(工業用ファン)を使用し、空気を循環させましょう。

倉庫内の空気循環を促し、滞留した熱気と湿気を効率よく排出。WBGT値の低下にも貢献します。

 

・熱中症指数モニター(WBGT計)を設置し、熱中症のリスクを把握しましょう。

温度だけでなく湿度・輻射熱も加味したリスク把握に。作業エリアごとの設置が効果的です。

 

天井の高い倉庫は冷気が届きにくい

物流倉庫の多くは天井が高く、空調を設置していても冷気が上部に逃げ、作業エリアには届きにくい構造になっています。また、出入口が多いため外気が入りやすく、冷房効果も限定的です。以下のような対策がおすすめです。


・スポットクーラーや業務用扇風機を作業者の高さに合わせて配置

・一定時間ごとの休憩を明確にルール化

・高温作業エリアへの長時間連続配置を避ける


作業着の素材も熱中症リスクに影響


倉庫作業員のユニフォームも、実は熱中症リスクに関係しています。通気性の悪い化繊素材や、速乾性を重視しすぎた衣服は、逆に体温調節を妨げてしまう場合があります。厚手の作業着やヘルメット着用が求められる現場では、以下のような対策が有効です。

 

・通気性・吸湿性に優れた作業着素材の選定

・空調服やネッククーラーなどの導入

・制服支給ではなく「季節に応じた選択制」への移行検討


物流現場の“見えにくい熱中症リスク”を見逃さないために

2025年6月から義務化される熱中症対策は、屋外作業だけでなく、倉庫や物流センターなどの「屋内作業」も対象になります。「室内だから安心」とは限らず、湿度・風通し・作業内容などによっては、屋外以上にリスクが高まる場合もあります。

制度対応だけでなく、「人を守るために何ができるか」という視点で対策を進めることが、現場の安全と企業の信頼につながります。現場の声を反映した“実効性のある対策”を、今から整えていきましょう!

工事現場安全対策コラム一覧に戻る