【2025年6月義務化】職場の熱中症対策で企業がすべきこと|対応手順と必要グッズ一覧

【2025年6月義務化】職場の熱中症対策で企業がすべきこと|対応手順と必要グッズ一覧

2026.07.26 工事現場

2025年6月1日、改正労働安全衛生規則が施行され、職場の熱中症対策がついに「罰則付きの義務」になりました。これまで努力義務とされてきた対策が、対応を怠れば事業者が刑事罰の対象となる法的義務へと変わっています。

義務の中身を一言でまとめると、「熱中症のおそれがある作業者を早く見つけ、迅速に判断して、適切に対処する」ための社内体制を、あらかじめ整えて周知しておくことです。具体的には、①報告体制の整備、②重篤化を防ぐ手順の作成、③関係者への周知――この3つが事業者に義務付けられました。

本記事では、建設現場や施設管理の現場を想定し、「自社は対象なのか」「何を整備すればよいのか」「どんな備品を揃えるべきか」を、実務に落とせる形で整理します。夏本番を前に、あるいは来シーズンに向けて、抜け漏れのない体制づくりの参考にしてください。

2025年6月から何が変わったのか

これまでの労働安全衛生法でも、高温による健康障害を防ぐために「塩および飲料水を備えること」などは求められていました。しかし、熱中症による労働災害の多くで原因とされてきた「初期症状の放置」や「対応の遅れ」に対処する明確な規定はなく、あくまで指針・努力義務のレベルにとどまっていました。


今回の改正では、労働安全衛生規則に第612条の2が新設され、熱中症対策が具体的な義務として明文化されました。ポイントは、これが単なる努力義務ではなく、罰則付きの法的義務である点です。対応を怠った場合、労働基準監督署による指導・是正勧告の対象となるだけでなく、事業者が刑事罰を科される可能性があります。


義務化された内容は、大きく次の3つの柱に整理できます。


  • 報告体制の整備:熱中症の自覚症状がある作業者や、異変に気づいた周囲の作業者が、その旨をすぐに報告できる連絡先・担当者を、事業場ごとにあらかじめ定めること

  • 重篤化防止手順の作成:作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じた医師の診察・処置、緊急連絡網や搬送先の確認など、症状の悪化を防ぐための実施手順を、事業場ごとにあらかじめ定めること

  • 関係者への周知:上記の体制・手順を、対象作業に関わる作業者に確実に周知すること


「見つける → 判断する → 対処する」という一連の流れを、その場の判断任せにせず、あらかじめルール化・見える化しておくことが、今回の改正の核心です。

自社は義務の対象になるのか

まず確認すべきは、自社の作業が義務の対象に該当するかどうかです。義務の対象となる「熱中症を生ずるおそれのある作業」は、次の環境・時間の両方を満たす作業と定められています。


  • 暑さの基準:WBGT(暑さ指数)が28度以上、または気温31度以上の環境

  • 時間の基準:その環境下で、連続1時間以上、または1日あたり合計4時間を超えて行われることが見込まれる作業


重要なのは、この基準が屋内・屋外を問わず、業種も問わず適用されることです。建設現場や資材置き場での屋外作業はもちろん、空調の効きにくい倉庫・工場・厨房などの屋内作業も対象になり得ます。「うちは建設業ではないから関係ない」という判断は危険です。


ここで実務上のカギになるのが、WBGT(湿球黒球温度)です。WBGTは気温・湿度・輻射熱(日射や地面からの照り返し)・風速を総合して評価する暑さの指数で、単なる気温とは異なります。義務の判断基準そのものがWBGTである以上、現場の実測値を把握できていなければ、「自社が対象かどうか」も「対策を講じるべきタイミング」も判断できません。まずは現場のWBGTを測れる状態にすることが、対応の出発点になります。

なぜ今、義務化されたのか(背景データ)

義務化の背景には、職場での熱中症による労働災害の深刻化があります。


厚生労働省の統計によると、令和6年(2024年)における職場での熱中症による死傷者(死亡・休業4日以上)は1,257人にのぼり、前年から約14%増加しました。死亡災害も高止まりが続いており、近年は3年連続で年間30人を超える水準となっています。死傷者のうち相当数を建設業と製造業が占めており、屋外や高温多湿の環境で作業する業種でのリスクの高さが際立っています。


さらに、死亡・重症化した事例を分析すると、その多くで「初期症状の放置」や「対応の遅れ」が原因として指摘されました。つまり、暑さそのものだけでなく、「異変に気づいたのに適切な対応がとられなかった」ことが被害を大きくしていたのです。今回の改正が「見つける・判断する・対処する」の体制整備に重点を置いているのは、こうした実態を踏まえたものです。

企業がすべきこと|3つの義務への具体対応

ここからは、義務化された3つの柱について、現場で何をすればよいかを具体的に整理します。

① 報告体制を整備する

まず、熱中症の自覚症状がある作業者や、周囲で異変に気づいた作業者が、ためらわず報告できる仕組みを作ります。「誰に」「どうやって」報告するのかを明確にし、連絡先や担当者を事業場ごとに定めておきます。

ポイントは、報告を「待つ」だけの受け身の体制にしないことです。厚生労働省は、報告を受ける体制に加えて、職場巡視、バディ制(2人1組で互いの体調を確認)、ウェアラブルデバイスの活用、双方向での定期連絡などによって、症状のある作業者を積極的に把握するよう努めることを推奨しています。特にひとり現場や広い現場では、本人からの申告に頼りきると発見が遅れがちです。「気づける」仕組みをどう作るかが重要になります。

② 重篤化を防ぐ手順を作成する

次に、実際に熱中症が疑われる作業者が出たときに、何をどの順で行うかの手順を、あらかじめ文書化しておきます。盛り込むべき要素は次のようなものです。


  • ただちに作業から離脱させる

  • 涼しい場所へ移動させ、身体を冷却する(衣服を緩める、氷や送風で冷やす等)

  • 症状に応じて医師の診察・処置を受けさせる

  • 緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先・所在地をあらかじめ整理しておく


「体調不良が疑われたら、躊躇なく作業を中断して管理者へ報告する」というルールを徹底し、現場の誰もが迷わず動けるようにしておくことが目的です。手順書は作って終わりではなく、朝礼や掲示で日常的に共有されている状態にしておきます。

③ 関係者へ確実に周知する

整備した報告体制と手順は、対象作業に関わる作業者へ漏れなく周知して初めて機能します。周知の方法としては、休憩所や会議室など目につく場所への掲示、朝礼やミーティングでの説明などが挙げられます。

単に文書を配って終わりにせず、労働衛生教育として、熱中症の症状・予防方法・緊急時の対応手順を作業者に理解してもらうことが求められます。自社での実施が難しい場合は、外部の関係団体が行う教育を活用することも選択肢です。周知の対象には、熱中症のおそれのある作業に従事する労働者本人だけでなく、その周囲で働く人も含めて考えるのが安全です。

義務+αで実施したい予防対策(4つの観点)

上記3つは「重篤化を防ぐ」ための義務ですが、そもそも熱中症を発生させない予防対策も、あわせて実施したいところです。厚生労働省の「職場における熱中症予防基本対策要綱」では、主に次の4つの観点から予防に取り組むことが示されています。


  • 作業環境管理:WBGT値の低減(日除け・遮熱・送風・冷房)、休憩場所の整備など。作業する環境そのものの暑さを下げる取り組みです。

  • 作業管理:暑熱順化(体を徐々に暑さに慣らす期間の確保)、こまめな水分・塩分の摂取、作業時間の短縮や休憩の頻回化など。

  • 健康管理:作業前の健康チェック、睡眠不足・飲酒・体調不良の申告、心疾患・糖尿病・高血圧などの既往歴に配慮した配置など。

  • 労働衛生教育:熱中症の危険性・予防・緊急時対応についての教育。厚生労働省や環境省が公開する教材の活用も有効です。


この4観点は、次に紹介する「必要グッズ」とも密接に結びついています。多くの備品は、作業環境管理と作業管理を具体的に実行するための道具です。

熱中症対策に必要なグッズ一覧

ここでは、義務対応と予防対策を実行するうえで現場に揃えておきたい備品を、機能別に整理します。「なぜ必要か」と「選ぶときのポイント」をセットで解説します。自社の作業内容・現場環境に合わせて、優先度の高いものから整備してください。

暑さを「測る」:WBGT計(熱中症計)

義務化の判断基準がWBGTである以上、現場の暑さ指数を測定する機器は最優先で揃えたい備品です。WBGTを把握できて初めて、「今日はこの作業が対象になる」「休憩を増やすべき」といった判断が客観的にできるようになります。


選び方のポイントは、黒球付きで輻射熱まで反映できる正確なタイプか、簡易的な携帯タイプか、という測定精度の違いです。屋外常設なら防塵・防水性能、基準値を超えたときに知らせる警報・アラーム機能、据置型か携帯型かも確認しましょう。複数の現場・作業場所がある場合は、その分だけ台数が必要になります。

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体を「冷やす」:空調服・ファン付きウェア/冷却グッズ

作業者本人の体温上昇を抑える定番が、ファン付きウェア(空調服)です。ファンで服の内部に外気を送り込み、汗の気化を促して体を冷やします。屋外・高温環境の作業では、作業管理の中核となる装備です。


選び方のポイントは、ファンの風量、バッテリーの容量と連続稼働時間、ベストタイプか長袖タイプか、洗濯のしやすさなどです。作業内容(火気の有無、粉じん環境など)によって適した素材・仕様が変わる点にも注意してください。現場人数分をまとめて導入するケースが多く、法人向けのまとめ買い可否も確認しておくと調達がスムーズです。


あわせて、クールベスト(保冷剤内蔵)、ネッククーラー、冷感インナー、冷却タオルなどの冷却グッズも、休憩時や補助的な冷却に有効です。ファン付きウェアと組み合わせることで、より確実に体温上昇を抑えられます。


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水分・塩分を「補う」:経口補水液・塩分タブレット

脱水と電解質不足を防ぐため、水分と塩分をこまめに補給できる環境づくりも欠かせません。休憩所に経口補水液や塩分タブレット、スポーツドリンクを常備し、作業者がいつでも摂取できるようにしておきます。

選び方のポイントは、ペットボトルタイプか粉末(希釈)タイプか、塩分・電解質の含有量、備蓄のしやすさ(賞味期限・保管性)などです。大人数の現場では、粉末タイプをまとめて備蓄しておくとコスト効率が高くなります。

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休憩環境を「整える」:スポットクーラー・ミストファン・日除け

「作業環境管理」の観点で要綱にも明記されているのが、休憩場所の整備です。作業の合間に体をしっかり冷やせる涼しい休憩スペースがあるかどうかは、熱中症予防に直結します。

スポットクーラー、ミストファン、大型扇風機、日除けテントやタープなどを活用し、直射日光を避けて体を冷やせる場所を確保します。選び方のポイントは、電源の確保方法(コンセント・バッテリー・発電機)、可搬性、屋外での使用可否です。現場の規模や電源事情に合わせて選定してください。

【スポットクーラー・ミストファン・日除けの一覧はこちら】

 

 

体調を「見える化」:バイタル計測ウェアラブル

前述のとおり、厚生労働省は症状のある作業者を積極的に把握する手段として、ウェアラブルデバイスの活用を推奨しています。体温・心拍・活動量などを計測し、異常の兆候を早期に検知できる機器は、「見つける」体制を強化する有力な選択肢です。特にひとり現場や広い現場で、本人の申告に頼りにくい状況で効果を発揮します。

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対策を怠った場合のリスク

今回の義務は罰則付きであり、対応を怠ることには複数のリスクが伴います。


まず刑事罰として、義務に違反した場合、労働安全衛生法に基づき6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります。加えて、労働基準監督署による指導・是正勧告の対象となり、改善が見られない場合には作業停止命令などの行政処分に至ることもあります。


さらに見落とせないのが民事上の責任です。事業者は労働契約法に基づき、従業員が安全・健康に働ける環境を整える「安全配慮義務」を負っています。十分な熱中症対策を怠った結果、作業者が死亡・重篤化した場合には、損害賠償責任を問われ、本人や遺族から高額の請求を受けるおそれがあります。


そして、従業員を守るべき企業が義務化された対策を怠り重大災害を招いたという事実は、企業ブランドや採用活動にも深刻な影響を与えます。罰則・賠償にとどまらないレピュテーションリスクとして捉えるべきです。

まとめ|早めの準備で「守る体制」を

2025年6月から、職場の熱中症対策は罰則付きの義務になりました。求められるのは、「①報告体制の整備」「②重篤化防止手順の作成」「③関係者への周知」を基盤に、自社の作業環境に合った仕組みを構築することです。


そして、これらの体制は暑くなってから慌てて整えるものではありません。WBGTの測定機器を用意し、空調服や冷却グッズ、水分・塩分補給用品、休憩環境を計画的に整備し、教育・周知を済ませておく――こうした準備を暑さの本格化前に完了させておくことが、作業者を守り、企業としての信頼を維持することにつながります。


必要な備品の選定・まとめ買いについては、現場の作業内容や人数に合わせてご相談ください。義務対応と予防を両立できる装備の整備を、シーズンを通じてサポートします。

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よくある質問(FAQ)

Q. 屋内作業でも熱中症対策は義務ですか?

A. はい。義務の対象は屋内・屋外を問いません。WBGT28度以上または気温31度以上の環境で、連続1時間以上または1日4時間を超える作業が見込まれる場合は、屋内の倉庫・工場・厨房なども対象になり得ます。


Q. WBGT計は必ず用意しなければなりませんか?

A. 機器そのものの設置が個別に義務付けられているわけではありませんが、義務の判断基準がWBGTである以上、現場の暑さ指数を把握できる状態にしておくことが実務上ほぼ不可欠です。測定手段がなければ、対象判断も適切な対策判断も難しくなります。


Q. 中小企業や小規模な現場も対象ですか?

A. 対象です。今回の改正は企業規模を問わず適用されます。条件を満たす作業を行う事業場は、規模にかかわらず体制整備・手順作成・周知が求められます。


Q. 対策を怠るとどうなりますか?

A. 労働安全衛生法に基づき6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があるほか、是正勧告や作業停止命令、安全配慮義務違反による損害賠償リスク、企業の社会的信用の低下といったリスクがあります。


Q. 「暑熱順化」とは何ですか?なぜ重要なのですか?

A. 暑熱順化とは、体を段階的に暑さに慣らしていくことを指します。人の体は、暑い環境に数日から2週間ほどかけて徐々に適応し、汗をかきやすくなるなどして熱に強くなります。逆に、梅雨明け直後の急な気温上昇時や、休み明け・新規入場者など「まだ暑さに慣れていない人」は熱中症のリスクが高くなります。作業初日からいきなりフル稼働させず、作業時間や強度を徐々に上げていく配慮が、予防上とても重要です。


Q. 具体的な対応は、どの公的資料を確認すればよいですか?

A. 厚生労働省が公表している「職場における熱中症対策の強化について」のパンフレット・リーフレット、および改正省令の施行通達(令和7年5月20日付け基発0520第6号)が実務の基準になります。予防対策については「職場における熱中症予防基本対策要綱」もあわせて参照してください。いずれも最新版を厚生労働省のウェブサイトで確認することをおすすめします。


 


 


※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法令適用や対応の詳細については、最新の厚生労働省の公表資料や、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご確認ください。

 

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